身体表現コンサルタント&マイムアーティスト
荒木シゲル

2015.09.30

道成寺~パート2

能の「道成寺」って、言ってみれば“ベートーベンの第九”みたいな演目なんですよね。

延長6年(928年)に起きたとされる事件が元になっているお話です。

その事件というが…

福島県白河市の安珍という山伏が、用事で和歌山県田辺市あたりに滞在したとき、

滞在した宿の娘の清姫と良い感じになりました。

そして今晩もまた泊りにくるね、と約束するんですが、

安珍は仏の道を極めるはずが、女なんぞにうつつをぬかしてはイカンなどと

中途半端な罪悪感に駆られて、こっそりその地を去ってしまいます。

一方清姫は安珍の帰りを待ちますが、一向に来ません。

探しに行くと、もう国に帰ったと知らされます。

清姫は安珍がだまって去ってしまったことに怒り、後を追いかけます。

なりふり構わず狂ったように追いかけ、伝説では最後は大蛇のようになって野山を駆け抜けます。

いよいよ追いつかれるとなったとき、安珍はそこにあった道成寺に逃げ込みます。

道成寺の住職は安珍をかくまいますが、結局隠れていた鐘つき堂で見つかり、

焼き殺されてしまいます。

そして清姫も寺の近くで自殺をしてしまったそうです。

 

能の道成寺はそれよりも数百年後が舞台です。

能バージョンのストーリーは…

お坊さんが鐘の供養のために道成寺を訪れると

きれいな女性が現れ、舞を舞います。

そして鐘に近づいてついに鐘を落として中に入ってしまいます。

お坊さんはそこで女が清姫の霊であることを知り、祈祷して鐘を上げると

中から蛇体に変身した女が現れ、お坊さんと争い、最後は自らの炎に身を焼き日高川の奥底に

姿を消してゆく…

といった感じです。

 

なんといっても“能の道成寺”の見せ場は、

“乱拍子”

と呼ばれる演者と小鼓のやりとりの部分です。

娘が舞を踊る場面なのですが、

緊迫感のある鼓の音に、演者はただ立ち、ギュイーンっとテンションをマックス状態にして

片足で足踏みします。

動きとしては、その場でただ片足を上げて下に下して、足踏みをするだけなのです。

ミニマルで超禅チックな舞なのです。

これが、すごい人がやると本当にやばいんですよ。

緊迫した雰囲気の中で、その小さな動きがエネルギーの大爆発のような…。

何とも言葉では言い表せない、ど迫力な

ザ・日本文化!

ザ・侘び寂!

なわけです。

昔NHKでこの乱拍子を舞う演者に心拍計を付けて調べたところ

ほとんど動いていないにも関わらず、全力疾走で走っているのと同じくらいの

心拍数だったそうです。

これが15分間続きます。

さらに鐘の中に入る場面も見せ場の一つで、

演者が鐘のセットの下に着たとき、素早くジャンプした瞬間に鐘が降ろされ、

演者が一瞬のうちに鐘に引き込まれたような状態になります。

鐘を落とすタイミングが少しでも間違えると大けがにもつながる、

大変危険な演技なんです。ここもすごいんですよね。

とにかく最初から最後まで緊張感が絶えない作品です。

一方で、ダメな演者によって演じられる道成寺は

死ぬほど退屈な作品にもなりえるんです。

(だって15分間ただ足踏みするだけですから…)

自分のような“にわか能ファン”は、大抵最初は道成寺にはまります。

とはいえ、600年前にその乱拍子という演出を作るセンスって、ほんとすごいと思うんですよね。

 

そんなこんなで、和歌山旅行を計画中に“道成寺”という名前を聞いて

「え!マジで!?」となってしまったという訳です。

さてその憧れの道成寺に行ってみた所、衝撃の事実が!!!

~つづく~30