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コミュニケーション・トレーナー&マイム・アーティスト
荒木シゲル

2012.04.11

ジャングルの記憶

先日、ボート競技の選手の方とお話する機会がありました。

私にはあまりなじみのないスポーツでしたが、四人程度の選手が一列に並んで一つのボートを漕いで速さを競うのだそうです。

その時、緊張をどのように克服するか、という話になり、その方はある試合の前に大きく深呼吸したら緊張がほぐれた、というお話をしていました。緊張の克服はアスリートにとって結果を左右する重要なことなので、とても印象的な瞬間だったそうです。

私もある公演の前に緊張を克服できたと感じたときのことを鮮明に覚えています。その日、ある小さいクラブで2回パフォーマンスさせてもらう予定だったのですが、1回目の後で動きが力んでいると指摘されて、筋肉をリラックスしようと意識したところ、気持ちの緊張も取り除くことができました。

その瞬間に部屋の内装や来ている人の表情などが目に入ってきて、不思議な感覚でした。なんと言うか、空気が違って感じました。

以後、緊張を感じたら、全身で筋肉が力んでいないか意識して、少し力を抜くようにします。これは自分の対処法ですが、そのボート競技の選手の方は深呼吸なわけで、それがわかった瞬間、自分が一つ成長したようなそういう感覚になります。

緊張の克服というのはある意味究極の身体コントロール能力だと思います。NASAでは、危険が伴うロケットの発射の際、緊張によって誤った操作をしないようにステレスマネージメントの訓練を行うと聞いたことがあります。

 

ところで緊張をしているとき、身体が最も欲していることは“走って逃げること”なのだそうです。元々人は身の危険を感じたときに緊張します。例えば私たちの祖先がジャングルでライオンに遭遇したときには、一刻も早くその場から逃げなくてはなりません。そういった危険回避のために元々“緊張”はあるわけで、脳はとっさに余計な思考を停止して、出来るだけ遠くに逃げろ!という指令を下します。

その名残で、例えば誰かにラブレターを手渡そうというときとか、結婚式でスピーチをするときでも同じように反応をしてしまうわけです。

ちょっとわかるように気がしますね。確かに事故を起こしてパニックになった人がその場から逃げてしまったり、格闘技の選手が試合前に逃げてしまった、なんて話があります。“逃げたい!”という衝動に意識の全てが集中するので、緊張していると物事を冷静に考えられないですし、またその非常事態に備えて体内のエネルギーを溜め込んでエネルギーを持続させようともします。

全て生き抜くための知恵なのですが、その状態は危険が回避されたときまで続くのです。

緊張の連続はストレスにつながりますから、いわゆるストレス太りというのは、職場環境などが原因だったとしても、ジャングルを駆け回っていたときの名残で身体が自動的に代謝を悪くする結果生じるとか。

そう考えてみると、陸上の選手は緊張していたほうが良い記録が出るのかもしれませんね。