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コミュニケーション・トレーナー&マイム・アーティスト
荒木シゲル

2015.09.29

道成寺~パート1

先日の連休、いわゆる“シルバーウィーク”に家族で和歌山県に旅行に行きました。

あまり馴染みのない和歌山県でしたが、海あり温泉ありの充実した旅行となりました。

滞在したのは南紀白浜です。

準備のためにガイドブック見ている時に、能や歌舞伎の作品で有名な

「道成寺」

が大阪からの道中にあることを知りました。

「え!?あ、あの道成寺!?和歌山県にあるの???」

家族は全員ポカンとしていますが、自分一人で大興奮です。

こればかりは父親の権限で行く事にしました。

いや、まさかあの道成寺が実在していて、訪問できるとは…。

 

以前、能楽にすごくはまった時期があります。

いや、今もそれなりに好きなんですが、イギリスに住んでいるときに世阿弥が書いた

「風姿花伝」の存在を知り、興味を持ったのです。

能学は以前から興味があって、近代パントマイムの父を言われているデクルーも

能学を随分参考にしたようです。

実際能楽ってパントマイム的な要素がすごく強いんですよね。

シンボリックな表現とか。

で、この「風姿花伝」がまた面白い本で、600年ほど前に書かれて以降、

一族の秘伝書として守られていたものが、明治になって一般向けに出版された

日本最古の演劇論と言われています。

この内容には今回は触れませんが、一人イギリスで

「能マジやばい」

となっていた時、梅若流の現役の能楽師のである梅若猶彦さんが

ロンドンに博士号で留学していらっしゃると聞きつけたました。

「風姿花伝」の内容でいくつか質問がありましたし、

とにかく能楽についてもっとよく知りたいと思い、連絡してみたところ

梅若さんもパントマイムについてもご興味があったようで、快く訪問を了解してくださったのです。

そして、能楽や日本の古典芸能について貴重なお話をいろいろと伺うことができました。

梅若さんからもパントマイムについていくつか質問がありました。

「例えば、パントマイムで『壁』をやる時、

『この人の壁は冷たい感じだ、この人の壁はしっとりとしている』とか

物(イリュージョン)の質感について考えたことはありますか?」

といった質問など。

それまで全く考えたことがなかったことで目を白黒させてしまいましたが、

表現者として今考えても大変奥深いことだなぁ、と思いました。

また私がパントマイムの学校で先生から「能のエクササイズだ」と言われて行ったワークについて伝えると

大変興味を抱いていらっしゃるようでした。

それは、足を広げて自然な状態で立ち、動いたり全身のポーズを変えたりしないで

『存在を強く』したり『存在を消す』といったものです。

正に、「考えるな、感じろ!」の世界なのですが、

能楽には実際にそういった概念があるようで、

舞台の上に居ながら縁者が自分の存在を出したり消したりして、

観客の視点を集めたり移したりするそうなんです。

後日、私の知り合いのダンサーや役者を集めてワークショップを開いてくださることになりました。

そして冒頭でいきなり「翁」とう出し物の一部を見せて頂いたんですが

正直鳥肌がたちました。

「では、始めます。」

と言ってしゃがんだ状態から、見る見るうちにがーっとエネルギーが溢れてきて

舞っている間中、強い磁場ができてしまったような。

いやーすごいとしか言いようのない感じで、他の参加者も言葉を無くしていました。

身体表現の極みを目の当たりにした瞬間だったのです。

 

あぁなかなか道成寺にたどり着けません。

続く…。