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コミュニケーション・トレーナー&マイム・アーティスト
荒木シゲル

2015.10.06

道成寺~パート3(完)

若い頃にはまった能楽への思い、風姿花伝、梅若さんとの出会いと素晴らしい舞…

そんな思いを胸に、まったく能に興味のない家族を連れて、道成寺に行ってきました。

大阪から白浜への途中のインターで降りて、到着してみると、

お寺付近はお土産物屋さんが2~3軒ある程度でひっそりしています。

駐車場にはうち以外には1台程度。

能や歌舞伎で道成寺を知ってて「行ってみようか」となる人はそうそう多くないんでしょうね。

そして長い階段を上って境内に進みます。

安珍や清姫もこの階段を上ったんでしょうか。

敷地内に入ると早速見つけました。

安珍と釣鐘をまつった碑です。

もう一人だけ興奮マックス状態です。

鐘つき堂らしきものを探しましたが見つからないので、御堂の見学と説法を聞く事にします。

住職さんが案内をしてくださいました。

道成寺は大宝元年(701年)に宮子姫という文武天皇のご婦人によって

建立されたお寺です。

すごく歴史があるんですね。

境内には沢山の歴史ある仏様などがありました。

ただ、なんと言っても和尚さんが言った一言が印象的でした。

「今から1300年以上前に髪長姫と呼ばれた美しい姫によって建てられた道成寺ですが

1000年くらい前の安珍と清姫の一件以来、

その事件について説明するためのお寺になったのです。」

そうか、道成寺はそれまで普通の由緒正しいお寺だったんですが、

関係をこじらせたカップルが勝手にやってきて事件を起こしたもんだから

意図せず有名になってしまった訳です。

道成寺と言えば「あの事件、あの演目で有名な」ということで訪れる人も多く、

1000年以上も、おそらくこれから先もずっと、何が起きたのか説明する羽目になったという。

確かにいい迷惑というかなんというか、まぁ今はそのお蔭で訪れてくれる人も多い訳で

持ちつ持たれつなんでしょうけど…

道成寺側の立場で考えたことなかったですね。

 

その後、安珍と清姫の物語が書かれた絵巻で和尚さんが

「絵とき説法」をしてくださいました。

これがなかなか面白いんです。

ちょっと優柔不断な男と逆上したストーカーのようになってしまった女の話。

お話としてもある意味普遍的ですよね。

また独特の語り口調と坊さんならではのユーモアのセンスがツボにはまりました。

 

最後は大蛇になった清姫がグルグルと鐘つき堂に巻きつき

口から火をはいています。

で、その時になってわかった衝撃の事実。

道成寺には現在、鐘がないのです!

だって清姫が焼いてしまったから!

思わず道成寺=鐘と思っていたのですが、もうないのです。

そ、そうか。そうだよな。

改めて道成寺というお寺に降りかかった運命というか、

面白い話だなぁと思いました。

境内には能や歌舞伎の舞台で使用されたセットの鐘が2つほど展示されています。

でも今はもう鐘が無い道成寺。

説法を聞き終わり、鐘の形のお守りを買いました。

そして鐘つき堂跡(写真)のところまで行ってみました。

心なしか植わっている木が蛇のようです。

大迫力の能や歌舞伎と裏腹に、数奇な歴史ロマンを感じる美しくて静かなお寺でした。

安珍、清姫、安らかに。(完)