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コミュニケーション・トレーナー&マイム・アーティスト
荒木シゲル

2013.02.04

ノンバーバルコミュニケーション考

最近「ノンバーバルコミュニケーション」という言葉をよく耳にします。

私もパントマイマーという経歴があるので、ビジネスマン向けの研修を行うときには「ノンバーバル」は良く使う宣伝文句の一つです。

一般的にジェスチャーや仕草など、言語(バーバル)以外のコミュニケーションを総称する言葉ですが、もっと奥深い要素もあると思います。

パントマイムの学校に通っている時、日本の能のトレーニングだ、ということでとても奇妙なエクササイズをしたことを覚えています。それは、直立した状態で、自分の存在を強くしたり弱くしたりする、というものでした。

ただし、存在を強くするために胸を張るとか目を見開く、または弱くするために姿勢を悪くする、といったことはしません。あくまでも同じ姿勢のまま、意識によって自分にあてられた想像のスポットライトを強くしたり弱くするのだ、と言われました。

自分も含めて生徒は皆、戸惑ってしまいました。やり方がわからないですし、そもそも何がどうなれば成功なのか、しっかりとした正解がわかりませんでした。

 

その後能楽師の先生にお目にかかった時に、実際に能では舞台に居ながらにして存在を消したり、存在を高めたり、といったことをすると聞きました。目の前で演じてもらったときには、その意味を理解できたような気がしました。

立ち位置でポーズをとり準備をした状態から、みるみる“何かのエネルギー”が高くなり、演技が始まりました。

物凄い迫力でしたが、特に身体のポーズや動きとしては変化したわけではありません。

言葉にするならば“気”とか“オーラ”みたいなものだと思います。

そういったものを高めるトレーニングとして、その先生から立って行う禅、いわゆる“立禅”というものや、動いて行う禅運動?のようなものを教えて頂きました。禅的コーディネーショントレーニングですね。

高い存在感を持った状態では、同じ動きも意味や人へのインパクトが全く違います。

熟練になると、イスから立ち上がったり歩いたりする動作で人を感動させることができるのです。

まだまだ自分はそういった域に達しているとは思いませんが、こういったミステリアスな部分こそ肉体表現の醍醐味です。重要なのは、肉体的な鍛錬というか、あいまいではありますがそのためのトレーニングによって高めることができるという点です。

ただしそれはモーションキャプチャーやハビジョンカメラなどのテクノロジーでは記録し辛いものだと思います。

心の目や肌で感じるということなのか、本当のノンバーバルコミュニケーションというのは、実はもっとスピリチャルな?ものなのかもしれないと考える今日このごろです。