最近、表情とカラダのポーズについて発表する機会があったので、忘れないうちにまとめておこうと思います…
突然ですが、表情分析の世界では「万国共通の7つの表情」というものがあると言われています。
その7つとは幸福、恐怖、驚き、怒り、悲しみ、嫌悪、軽蔑です。
これはかのダーウィンが存在を予言して、後に表情分析の権威であるポール・エクマンさんなどの研究者によって実証されました。
文化や育った環境の影響を受けて表現のされ方に個人差はあるにせよ、表情はもともと遺伝に組み込まれているもので、特定の感情に対して反応する表情筋が紐づけされているのだそうです。
「本当に万国共通なのか?」「本当に7つなのか?」など、異議を唱える研究者もいるようですが、現時点での定説であり主流の考え方といえます。
何を隠そう私も、昨年エクマンさんが開発した表情分析システムFACSの認定資格を取得しました。
表情についていろいろと知るようになって、カラダのポーズとの関係性について興味が湧いてきました。表情が遺伝に組み込まれているものであるなら、顔以外の部分にもきっと何らかの影響があるはずです。
という訳で各表情をしているときに自然にみえるカラダのポーズについて、自分有に整理してみようと思いました。
まず私の真顔はこんな感じです。特別な感情を持たない状態で、さまざまな感情表現の基準となる表情です。
カラダでも同様の意味合いの「ニュートラルポーズ」と呼ばれるものがあります。
このポーズは先ほどの「真顔」同様に、最小限の個性や感情を表現している状態です。つまり素の状態ですね。
イメージしやすいように両方を並べてみました。真顔の人がニュートラルポーズをしている状態を想像してみてください。この状態から表情筋や関節などを動かすことで、感情や個性を表現することができます。
という訳で、いよいよ「万国共通の7つの表情」での自然なカラダのポーズを考えていきます。あくまでも私の主観的なイメージですが、それぞれの表情の特徴と、その感情を抱くような状況、表情とカラダのポーズとの共通点なんかも一緒に考えてみました。まずは「幸福」の表情です。
【幸福】
幸福の表情は口角を上げて、頬も持ち上げ、目じりに皺を作ります。
幸福なことが起きたとき、安心しているとき、満足しているときなどにする表情です。
これに対してカラダはどのような状態であれば自然に見えるでしょうか。
不安や危険を感じていないから幸福なのであって、結果顔もカラダも筋肉を力ませることはありません。ですから全体的にリラックスしている状態がしっくりきます。
例えば胸を張って頭も上の方向に傾く感じ。腕は下に垂らした状態でも違和感はないですし、腰に手を置いたり、高く持ち上げたり、ガッツポーズなどが似合いそうです。
頬を上げたり、胸を張って頭を上に傾ける感じは、重力に逆らっている点で共通しています。
次は「恐怖」の表情で考えてみます。
【恐怖】
恐怖の表情は眉間に皺を寄せつつ眉を上に持ち上げ、目も見開きます。さらに口も横の方向に引き延ばします。これが典型的な「恐怖」の表情なのですが、実際にやってみると顔全体を力ませなければならず、かなり大変です。
私たちは身の危険を感じたり、状況が理解できないでパニック状態になったときに恐怖を感じます。ですからカラダも自分の身を守るような、縮こまるようなポーズがしっくりきます。その場から動くことができず、座っているときであればイスにしがみつく感じかもしれません。顔もカラダも共通して全部の筋肉を力ませているイメージです。
ところで人は寒さを感じたときに恐怖の表情をするそうで、カラダも寒さに凍えているようなポーズにすると、怖がっているように見せることができます。次は「驚き」の表情です。
【驚き】
驚きの表情は、眉毛を上げて目を見開き、口もパカッと開きます。
予期せぬ出来事を目撃した時、大きい音を聞いたり驚かされた瞬間の表情です。一瞬のうちに力が入り息を吸い込むような状態になりますが、それ以降はこわばった感じはありません。
これをカラダで表現すると、肩を持ち上げて指を開いてしまうようなポーズが自然だと思います。ここで示したのは、瞬間的に全身に力を入れて軽くジャンプしている感じですが、それほど大きな動きにならないかもしれません。
指を開いたり肩を持ち上げて脇が開いてしまったりする感じは、やはり顔の表情と似た印象があります。次は「怒り」の表情を考えてみます。
【怒り】
怒りは、顔面の筋肉を力ませて、眉間に皺を寄せて目頭に力を込めてにらみます。さらに唇もギュッと力を入れて硬く結びます。
自分、もしくは親しい人が危害を加えられたり侮辱されて攻撃的な気持ちになったときの表情です。カラダでも拳をにぎったり相手に近づいてまさに攻撃しようとするポーズが似合います。
全身を力ませているところや、硬く結んだ口と握り拳に共通している要素を感じます。また別の見方をすると、顔では感情を表現しつつ、カラダはその感情を行動に移そうとしている、とも見えます。
次は「悲しみ」の表情です。
【悲しみ】
悲しみの表情は眉毛の内側を持ち上げてハの字にして、口角を下げます。リラックス、というより力が抜けている状態です。
希望や幸福が奪われた、親しい人や財産が奪われたような状況でしてしまう表情です。
悲しいときにはカラダはどのような感じになるでしょうか。やはり力が抜けて、肩を落とし、胸や頭が下の方向に傾きます。絶望しているので、積極的に行動に移すような印象には見えません。
悲しみの表情とカラダのポーズは特にとても形が似ています。「幸福」のときとは逆に口角も肩も重力に逆らえないで落ちている状態です。次は「嫌悪」の表情です。
【嫌悪】
嫌悪の表情は、鼻や上唇を持ち上げてつくります。嫌な臭いを嗅いだ時と同じ表情なのだそうです。
不快なもの、生理的にうけいれられないものや人を見たり近づけられたときにしてしまう表情です。
カラダも少しこわばらせて、上半身を相手から離し、頭や胸を横にそむけるようなポーズ、対象を避けよう、距離を置こうととする姿勢が自然に見えます。
感覚的に「怒り」や「軽蔑」と似ていますが、「怒り」は対象に対してより攻撃的で、「軽蔑」は相手を見下す感情です。一方「嫌悪」はステイタスが低く、対象を避けよう、自分から逃げようとしている印象があります。
漂っている嫌な臭いなど、自ら戦うことができない対象に対して抱く感情なのかもしれないですね。次はいよいよ最後、「軽蔑」の感情です。
【軽蔑】
軽蔑の表情は左右どちらかの上唇、または口角を非対称にあげて作ります。左右どちらでも良いのですが、なぜか左側を上げる人が多いそうです。
不快な人や人の行為を見下したり、価値のないものとみなしているような感情です。「嫌悪」と比べて自分に対するステイタスが高く、相手を見下しているような印象と言えます。
この表情に自然に見えるカラダのポーズは、比較的リラックスさせて正面ではなく少し横に向けたり頭を上に傾けて見下すように相手を見る、顎を引いて相手をにらむような感じでしょうか。相手を下に見ているので「怒り」のように攻撃するというより、余裕を見せて相手を挑発しているようなイメージです。ここでも左右非対称な感じが表情とカラダで共通しているように思います。
【まとめ】
7つの表情に対して、自然に見えるカラダのポーズを考えてみました。こうしてみるといくつか気付いた点があります。
まず、
- 感情表現における表情とカラダのポーズは関係性が深く、分けて考えることはできない
という点です。顔とカラダで似たような要素、形を示すことで、全身でみると自然な印象になります。次に
- 感情に能動的な機能(取りたい行動)がある場合、それに関係するポーズをとることがある
という点です。「怒り」(攻撃したい)「嫌悪」(対象から逃げたい)といった感情でそれが見えました。また、
- カラダで感情を表すとき、「形」以外にも筋肉のテンションにも特徴がでる
という発見もありました。力んでいる表情のときにはカラダも力んだほうが自然に見えるということが言えると思います。
次回はあえて表情とカラダのポーズのコンビネーションを変えるとどのような印象になるのか?を考えてみたいと思います!
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