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コミュニケーション・トレーナー&マイム・アーティスト
荒木シゲル

2012.03.13

ちんたら小僧の呪縛

“表現力を高める”という言い方をよく自分でも使うのですが、これは正確には“表現の幅を広げる”ということなのだと思います。

例えば声が小さくていつも自信が無さそうに振舞っている人は、それをやめるということではなく、“状況に応じて大きい声で自信のある振舞いもできるようになる”ということが大事なんだと思います。

時と場合によっては小さい声でしゃべったり、あまり自分が表に出ないほうが良い状況もあるからです。

いつでも声が大きくて自分の主張を押し通す人は、頼もしいと思われるときもありますが、うっとうしいとか無神経に受け取られてしまうかもしれません。

大事なのはコントラストなんだと思います。

“表現の幅を広げる”第一歩は、筋肉のテンションの幅を広げることです。

第一歩と言いながらこれがなかなか難しい。人は大体筋肉の力の入れ方に癖があって、それを意識して変えるのはなかなか困難です。

一般的には、というかイギリスで通っていたフィジカルシアターの学校では、“男性は筋肉のテンション高めに、女性は低めに使う”と習いました。

筋肉のテンションが高いということは力を強めに入れているので力んだ印象になり、低いと力をあまり入れないので、ソフトでふわっとした印象になります。

つまり力強さはマッチョ(男性的)でソフトな感じはフェミニン(女性的)ということですね。

ただこれは個人差があって私は男ですがテンション低めなほうです。というかアジア系の人種は男女を問わず西洋やアフリカ系の人種と比較してテンション低めでソフトな印象があるような気がします。

私はその学校に入学当初から、師であるデズモンド・ジョーンズから“もっとハードに!もっとストロングに!”と注意されたものです。

私にとっては目から鱗が落ちる思いでした。

というのも私は子供の頃から、自分の気持ちとは裏腹にいつも人から“適当にやってる!”とか“ちんたらするな!”といわれ続けてきたという経験があります。

子供の頃習っていた柔道や地域のソフトボールのチームなどで、なぜかコーチからそのように怒られて余計にランニングだのウサギ飛びをやる羽目になり、理不尽に感じたものです。

それが自分の筋肉をソフトに使う癖によるものだ、ということをフィジカルシアターの学校で知ったのです。

確かに自分以外で同じ注意をされている人を見たとき、他の人と比べて緊迫感が少なかったり一生懸命やっていないように感じました。

そうか!これまで“ちんたら小僧!”と言われていたのは自分の筋肉の使い方原因だったのかとその時初めて理解できたのです。

以後私は意識して筋肉に力を入れる練習をして、少しずつそういった動きもできるようになりました。

一方クラスにいた友人の中には、先生から“ソフトに!もっとリラックスして!”と注意されている人もいました。

私とは逆の癖を持つ人、つまり常に筋肉のテンション高めで振舞う傾向のある人は、リラックスしてソフトに動くように先生から指導されていました。

こういう癖を自分で意識してコントロールできるようになったのは、学校に通い始めて半年~10ヶ月程度経ってからだと思います。

意外と時間がかかるんですが、筋肉の力の入れ方をコントロールできるようになるだけで、表現力は格段に広がります。

皆さんも周りに、適当に仕事しているような印象の人がいたら、筋肉のテンションに注目してみてください。

もしかしたら気持ちはいたって真剣かもしれません。

こういう印象を改善するには、反射運動などが効果的なのですが、そこら辺はまたの機会に。

とにかく単に癖の問題かもしれないので、少し優しい目で見守ってあげましょう。

(ま、本当にやる気が無い人なのかもしれませんが。)